「やり抜く力」をはぐくむハートバッグ

モンテッソーリの活動で3歳児が集中して活動をしている様子
集中してワイヤーにビーズを通し指輪を作る3歳児

最近、テレビ局のアシスタントディレクターの方より、電話で問い合わせがありました。

将棋で最近話題の藤井四段が受けた教育について、番組で紹介するとのこと。

ハートバッグをモンテッソーリ教育で取り上げている理由やその効果について質問されたのですが、
「運動の洗練や秩序感の発達を促すハートバッグの活動を通して、子どもの集中力ややり抜く力が育まれるのです。」
と答えました。
皆さんのご参考になればと、その内容をご紹介させていただきます。

運動の洗練や秩序感をはぐくむハートバッグ作り

青色、ピンクの色紙を編んで作れらたハートバッグ
青色、ピンクの色紙で編んだハートバッグ

「モンテッソーリ教育を導入した幼稚園に通っている時に、藤井四段はハートバッグを夢中になって作ったとのことですが、モンテッソーリ教育でハートバッグを取り上げているのはなぜですか。たとえば、空間的な把握力を高めるといった効果があるとか。」

 

モンテッソーリ教育では、幼児の発達に合わせていろいろな教具や教材を用意しています。

その教材のひとつとして、ハートバッグが活用されています。
幼児期の発達で重要な項目として、言語、感覚、運動、秩序、挨拶・礼儀、数などがありますが、ハートバッグを作る活動は、運動や秩序に関して効果的だと思います。
運動ですが、自分の思うように動かせる体を作っていく必要があります。

特に幼稚園年少時期には、指先などの細かい動きを洗練させる時期です。
また、順番や場所、位置などにこだわりを持つことで、秩序感が養われていきます。
このこだわりは3歳をピークに4歳ぐらいまで続きます。
ハートバッグは、両手の指先を繊細に動かして順序良く製作する活動動ですので、幼稚園児の運動と秩序感を発達させるのにふさわしい活動です。

編み方を学んでマフラー作り

モンテッソーリ教育を取り入れた幼稚園に通っていた娘が卒園の記念に毛糸を編んで作ったマフラー
娘が幼稚園時代に毛糸を編んで作ったマフラー

「それでしたら、折り鶴とかでもいいわけですね。」

 

折り鶴の活動も運動と秩序を発達させるのにふさわしいと思います。
選ぶ活動がいろいろあった方が子どもが喜びます。
ハートバッグは大きくてデザイン的にも見栄えがするのでより達成感が得やすいかもしれません。
また、ハートバッグで編み方を学ぶことができますので、より高度な機織り機を使った毛糸でマフラーなどを編む活動にとつながります。
娘と息子は、モンテッソーリ活動を取り入れた幼稚園に通っていましたが、卒園の記念にと手動の編み機を使って毛糸でマフラーを編みました。
頑張って編んだマフラーは、今でも大事に残してあります。
藤井四段のお母様が、息子さんが一生懸命に作ったハートバックを大事に残している気持ちがよくわかります。

「やり抜く力」をはぐくむモンテッソーリ教育

モンテッソーリの活動で、幼稚園児が集中して立体ブロックの活動に取り組んでいます
集中して立体ブロックで活動する幼稚園児

「ハートバッグの製作が幼稚園児に効果的だということはよくわかりました。

ただ、藤井四段の、あのずば抜けた能力がどこで磨かれたのか‥そこのところがしっくりこないんでですが‥」

 

子どもはいろいろな活動に、次のような関わり方をします。
・活動を自分で選ぶ
・自分でやってみる
・納得するまでやり続ける
モンテッソーリ教育では、教師は、困っていたり、聞かれたときにやり方を示したりして援助し、教え込むようなことはしません。
また、活動をさえぎって次の教材を与えるようなことをしません。
ベースに、子どもの中に「自分を伸ばす力」が備わっているという考えがあるのです。
子どものどの部分を発達させるのかは、個人によって時期が異なってきます。
自分のどこを伸ばすのかは子ども自身が知っている、あるいは無意識に感じていることなのです。
ですから、それぞれの要素の発達にふさわしい適切な教材をそろえて子どもに選ばせるというやり方を行うことになります。
今の自分に必要だと感じて活動を行うので、自発的に集中して行います。
その活動を、順序や位置などやり方をしっかり理解して、自分の体を使いこなすようになるまで継続します。
そして、子どもが納得・満足するとその活動を止めます。
子どもの内的な欲求に応じた活動を自分で選んでいるので、集中して、モノになるまで自分で工夫してやり抜き、その活動(課題)を達成。
そして、ご褒美として大きな達成感と自己肯定感を得ます。
そして、次の課題に前向きに取り組んでいく。
この善循環で子どもはぐんぐん成長します。
成長につれて、無意識的、本能的な欲求が意識的な欲求へと自然に変わっていきますが、幼稚園時代に身に付けた問題解決アプローチと自己肯定感を持って、さまざま課題を「やり抜く」ことができるようになっていくのではないかと思います。

 

「やり抜く力や集中力が育つのですね。やっと、しっくりきました。ありがとうございました。」

ハートバッグやマフラーの写真が欲しいとのこと。
撮影用に新しく作ったハートバックや娘が卒園の時に製作したマフラーを撮影して、メールで送付しました。
そのテレビ番組は関西で放送されなかったので、どのような形で番組に反映されたのかはわかりませんでしたが、モンテッソーリ教育について少しでも広く理解いただければと対応させていただきました。

モンテッソーリ教育を伝え続けたい

モンテッソーリ活動が伸び伸びとできるように環境を整えたバンビーニクレアーレの教室の様子
伸び伸びとモンテッソーリ活動ができる環境を提供するバンビーニクレアーレ

藤井四段の大活躍でモンテッソーリ教育がテレビや雑誌で取り上げられ、モンテッソーリ教育に対する認知度や関心がびっくりするほど高まりました。
バンビーニクレアーレでも問い合わせや体験会の申込みが増え、うれしい悲鳴を上げています。
脳科学や乳幼児の発達に関する研究が進み、モンテッソーリ教育の考え方が優れていることが再評価されています。
また、社会のさまざまな問題や課題に取り組む考え方として「問題解決力」の必要性が認識され、モンテッソーリ教育の「自分で考え、やり抜く力」にも注目が集まっています。
注目や関心が高まる中、お子様の成長を援助するとともに、モンテッソーリ教育のポイントをしっかり伝えていきたいと思います。
モンテッソーリ教育の第一人者、そして、私の大学時代の恩師である相良敦子先生が急逝されました。
相良先生のモンテッソーリ教育に対する深い想いを受け継がなければと強く感じています。

モンテッソーリ教育を実践し、少しでも多くの方に伝え続けていきたいと思います。
もちろん、藤井4段も応援し続けます。(笑)