7月に、幼稚園児クラスが毎年恒例の紙すき体験。
油小路二条上るの和紙倶楽部様でコウゾを原料とする本格的な和紙づくりに取り組みました。
作った和紙を使って、日常生活の道具づくりに挑戦。
年少児はうちわ、年中・年長児はLEDを使ったランプを製作しました。
伝統的なものづくり、日常生活に役立つものづくりを通した豊かな経験は、みんなのこれからの学びを深めてくれることでしょう。
紙すき体験
最初にお店の方から、和紙の作り方を説明いただきました。
集中して聞き、手順を頭の中に入れてから、和紙づくりに取り組みました。
①紙すき
すけた(簀桁)を使って、和紙をすきます。
手で原料をよく混ぜてから、すけたで原料をすくいます。
原料が一面に均一に広がるように、すけたを動かします。
水が切れるまですけたをしばらく持ち上げる必要がありますが、
原料が入るとかなりの重さ。
みんな、がんばってしっかり持ち上げ続けることができました。
②吸水
和紙の水分を専用の吸引機で吸い取ります。
吸い込み口の上で動かすことで、まんべんなく水分がとれます。
数回動かすと、原料が白くなってきました。
水分が上手にとれましたね。
色つけ
筆を使って、顔料で和紙に色をつけます。
用意いただいた4色から好きな色を選んで、好きな形や模様を描きます。
お友だちは、筆を持った瞬間から、勢いよく描いていきます。
おにぎりやハートマークを描いたり、いろいろな色を入念に描きこんだり、
ひとりひとりの個性や感性が素敵な形になりました。
④吸水
顔料の水分を専用の吸引機で吸い取ります。
2回目なので、動かし方もスムーズになりました。
乾燥
すけたから和紙をはずし、和紙専用の乾燥機で乾燥させます。
すけたの4すみのどれかに、強く息を吹きかけます。
和紙が金網から少しはずれたところから、ゆっくりと手でめくって和紙をはがします。
相当、息が強くないとはずれないようです。
先生やお店の方に手伝ってもらって、和紙をはずしました。
はずした和紙を、お店の方に乾燥機に貼っていただいたあと、
刷毛を使って、中央から外側に、ていねいに和紙を伸ばしていきます。
これで作業は完了。
乾燥してどんな和紙が出来上がるのか楽しみですね
完成
45分間で、2枚から3枚、和紙を作りました。
乾燥した和紙を手に取ります。
色つけしたときより、やわらかな色合いです。
刷毛で伸ばしているので、しわもなく張りのある手触りのしっかりした紙です。
自分だけの和紙ができました。
普段できないことを体験した喜び
自分のイメージが形になるうれしさ
自分でつくった満足感
はい、チーズ!
みんな、自分だけの和紙をかかげて、笑顔がこぼれました。
和紙を使った製作
「自分のつくったものが役に立つ」
こんな気持ちを実感してもらおうと、自分で作ったオリジナルの和紙を使って、身近な日常の道具を製作しました。
うちわの製作(年少児)
暑い夏には欠かせないうちわを作ります。
- ハサミで、2枚の和紙をうちわの形に切る
- 切った和紙に、しっかりとのりを塗る
- うちわの骨の両面に和紙を貼る
あらかじめ、うちわの形に引いておいた線に沿って切っていきます。
正確に切らないときれいなうちわができないので、集中して切りました。
上手に切れて、ほっと一息。
のりを塗ってうちわの骨にていねいに貼りました。
数十分で乾燥して出来上がり。
あおぐと涼しい風がおこります。
きれいな柄と本物の和紙でできたオリジナルのうちわができました。
がんばりました。
家で、お父様やお母様に使ってもらいましょうね。
ランプの製作(年中・年長児)
年中・年長児は、和紙を使ったランプの製作を行うことにしました。
和紙倶楽部さんで、小型のLEDの上に、円筒状に巻いた和紙を置いたランプの展示がありました。
乾電池で光る、安価で扱いやすいLEDを入手できたので、今回、初めて取り組みです。
- 和紙の四辺を折りこんで、きれいな長方形にする
- 好きな色の短冊を選び、細く切り、和紙の上下に両面テープで貼り、縁取りをする
- 左右の両端を両面テープで止めて円筒状にする
- 鉄製はめ込みの中から好きな形を選んで、好きな色の紙にかたどり、ハサミで切り、LEDの台座をつくる
- LED機器の中に、単4電池3本を指定された向きにはめる
- LED機器の底に、両面テープで台座をつける
- LED機器に円筒状の和紙を置いて完成
和紙の貼り合わせがきれいになるように両面テープを使いました。
お友立ちは両面テープをほとんど使ったことがないので、はじめは戸惑っていたようですが、すぐに慣れました。
LED機器に電池をはめたのですが、
「あれ、つかない」
スイッチをいれても、LEDが点灯しません。
もう一度ふたを開けて、電池の方向を確認。
プラスとマイナスの方向が反対向きになっている電池がありました。
入れ替えたら大丈夫。
中のLEDが和紙の模様をきれいにうつし出しました。
「きれい!」
みんな。予想をはるかに超えた出来栄えに満足の様子。
みんな、さっさとLEDを消します。
「つけておいたらきれいなのに、どうして?」
「だって、電池がすぐになくなってしまうから」
「もったいない」の気持ちをしっかり持っているのですね。
反省させられました。(笑)
将来につながるさまざまな体験
7世紀のはじめに中国から伝えられた紙をつくる技術。
当時の紙は麻でつくられていたようですが、繊維がとても硬くて
繊維をほぐす作業が大変でした。
日本原産コウゾ、ガンビ、ミツマタなどの植物はほぐれやすいので
麻のかわりにこれらの植物を使って、日本独自の製法が完成。
こうして、平安時代のはじめに和紙がつくられるようになりました。
コウゾはとてもじょうぶなため、長期間の保存が必要な文書や書籍に使われてきたとのことです。
日頃、使っている紙をつくるという体験は、お友だちにとって新鮮。
みんな、集中して取り組み、和紙の出来栄えにも満足そうでした。
また、和紙を使ったうちわやランプの製作にも集中して取り組みました。
迎えに来たお母様が、
「上手にうちわができたね。あおぐと風がくるよ。」
「きれいなランプ。寝るときとか部屋の暗いところにおいたら便利だね。」
と言葉がけをされていました。
日常生活の道具を自分でつくることで、作る楽しさ以外に
役に立つ喜び
という充実した気持ちを感じたのではないかと思います。
- 日本の伝統に触れる
- ものを作る
- 役に立つ
こういった体験が、これからの活動の幅をひろげてくることと思います。
また、来年も紙すき体験に取り組みたいと思います。
暖かく丁寧にご指導くださった和紙倶楽部のスタッフの皆様、
心よりお礼申し上げます。