3~6歳では、環境と脳の接点となる感覚が敏感になり、脳の発達を促しながら、知識を蓄積していきます。
モンテッソーリ教育では、さまざまな敏感期の発達を促す教具が用意されていますが、聴覚の発達を促す「雑音筒の活動」に取り組みました。
精神の成長を促す感覚器官
脳のハードウェアがつくられる幼児前期(0~3歳)は、見る、聴く、手や口を使って触るなど五感をフル回転させて、「運動」を行いながら、まわりの情報を積極的に「吸収」。
無意識の中で蓄積された情報が、将来の豊かな知識のベースになります。
これらの吸収した環境の情報は、幼児後期(3~6歳)で、意識的に理解されるようになるとともに、発達してきたいろいろな部分が統合されて、知性や人格の基礎が形成されます。
環境からの情報への理解を深めて知識にしていく中で、環境と脳の接点となる感覚器官が敏感になります。
「感覚の敏感期」である幼児後期(3~6歳)の子ども達に、感覚教育の必要性があるため、モンテッソーリ教育ではいろいろな教具が用意されています。
音の強さを確認する感覚教具「雑音筒」
モンテッソーリの活動では聴覚に対する教具はふたつあります。
- 音の強さを確認する「雑音筒」
- 音の高低を確認する「音感ベル」
リトミックで音の高低は学んでいるので、今回は「雑音筒」を取り入れることにしました。
赤と緑のふたの円筒が6本ずつ入ったふたつの箱が用意されています。
6本の円筒の中に小石やお米など異なった材料が入っているので、振ったときに音の強さがそれぞれ変わります。
赤と緑の円筒で、それぞれセットになっているので、同じ強さの円筒がひとつずつ対になっています。
底に同じ大きさのまる印をつけているので、自分で合っているかどうか自分で確認できます。
- 音の強さが同じものを見つける
- 音の強さの順番に並べる
円筒を使ったこのような活動で、音の強さに対する理解を深めます。
雑音筒の製作
通常の教具は、中に異なった材料を入れた状態で封をしていますが、今回は円筒だけを入手したので、強さが変わるように中身の材料をいろいろ探しました。
振った時に、円筒の中で材料がぶつかって音が出ます。
音の強さが変わるのは
- 材料の大きさや重さ
- 材料の堅さ
次の4種類の材料でセットすることにしました。
- コーヒー粉(コーヒー豆を挽いたもの)
- お米
- 木製の玉
- ガラス製のおはじき
この順序で材料のサイズ(粒子径)は大きくなります。
木製の玉とガラス製のおはじきは同じぐらいの大きさですが、おはじきの方がガラス製で堅いので音は強くなります。
赤と緑の円筒ひとつずつにぞれぞれの材料を入れ、接着剤でふたを閉めました。
これで、雑音筒が完成です!
幼稚園クラスで「雑音筒」にチャレンジ
9月最初のレッスンで、幼稚園のお友だちに雑音筒のお仕事をしてもらいました。
みんなの前で、音の強さが同じ円筒を見つけるお仕事を提示しました。
- 赤い円筒をひとつ選び、手で筒の部分を持って振り、音の強さを聴きます。
- 緑の円筒の筒を振り、音の強さを聴き、同じ強さの円筒を見つけます。
- 同じ強さで、4組をつくります。(今回は4つの円筒)
- 合っているかどうか、筒の後ろを見て、まる印の大きさを確認します。
幼稚園のお友だち、二人にチャレンジしていただきました。
一番弱い音は集中しないと聞こえませんね。
かたい音とにぶい音の違いも強さに関係しそうですね。
音の強さの違いをしっかり聴き分けて、対の円筒を見つけることができました。
だいじょうぶです。
おしごとのひとつに加えて、次回のレッスンからは自分で選んでおしごとをしていただくことにしました。
静寂を大切にするモンテッソーリ教育
提示の時に一番弱い音の円筒を振ると、みんなじっと集中して聴きました。
静けさに包まれた教室の中で、円筒の中のコーヒー粉が弱い弱い音をたてました。
音の強さを確認することで弱い音、静かな音があることに気づくのです。
モンテッソーリ教育では、静寂を大事にします。
静寂になることで自分を見つめることができるというのです。
禅にも通じる考え方を小さな子どもが学ぶ機会があるというのは本当に素晴らしいことです。
幼稚園のお友だちの活動の様子をみながら、お仕事の仕方を工夫したり、強さの違う筒を加えたりして、聴覚の洗練を援助していきたいと思います。